令和6(2024)年度助成金活動報告
銅版画作品「記憶からあとずさり」シリーズの制作とその発表 (個展開催、記録集制作)
- 活動名称
- 銅版画作品「記憶からあとずさり」シリーズの制作とその発表 (個展開催、記録集制作)
- 氏名
- 奥野 智萌
- 名称
- --
- 実施年度
- 2025年
助成を受けた活動の成果
【概要・目的】
個展「記憶からあとずさり」の開催への助成を希望しております。
展示予定期間:2025年1月13日~18日
展示場所:Gallery b. Tokyo (東京都中央区京橋3丁目5-4吉井ビルB1F)
自分の身に起こった昔の出来事を思い出す時、私たちは一人称視点ではなく三人称視点の、カメラで記録した映像のように状況が再現されたイメージを思い浮かべることができます。それは、過去の自分自身から一歩「あとずさり」したことによって得られるイメージだと言えるでしょう。記憶を繰り返し想起し語り直すことを銅版画制作を通して行うことで、元の記憶からさらにあとずさり、語るたびに語り直され別の物語へと展開する可能性を持つ記憶の多面的かつ可塑的な有り様をイメージとして立ち上げることを試みます。
【スケジュール】
7月~9月 銅版画の図柄検討。額縁相談。
9月~12月上旬銅版画制作。13点以上制作予定。
12月上旬 DM入稿。ポストカード両面刷り。1000枚印刷。
12月中旬 DM600枚と郵送料15750円・ギャラリー使用料残金をギャラリーへ送付。広報開始。
1月11日搬入・設営日。
1月13日~18日 個展会期。記録撮影とレビュー執筆依頼。
1月18日 搬出。
1月下旬 展覧会記録をHPにて公開。記録集入稿。スキャニングした銅版画・ドローイング(漫画、レース編み含む)・記録写真・展覧会レビューをまとめた冊子。100部印刷予定。
2月中旬 記録集書店取扱開始。
【発表】
制作の成果は、東京都中央区京橋にある「Gallery b. Tokyo」というギャラリーでの個展と、その記録集の制作によって発表します。個展の日程は2025年1月13日~18日です。会期中の記録撮影とレビュー執筆を依頼し、個展終了後に記録集を制作します。
個展会場となる「Gallery b. Tokyo」はギャラリーが密集している京橋エリアにあり、コレクター等美術に興味のある方々から注目されています。新人発掘において認知度の高いギャラリーで個展を行うことで、私の作品を初めて見る方々との出会いが期待できます。
記録集は、銅版画の詩画集をリサーチし、本自体が一つの展覧会のようなものになることを目指して制作します。
その後、東京・京都・鳥取の個人書店などで取り扱っていただく予定です。展覧会は会期も短く、遠方在住や心身の状態などさまざまな理由で都合がつかない方が多いのが実情です。個展に足を運べなかった方や書店利用者へ向けて記録集を制作・出版します。
【将来的な展望】
私は自分の経験を、主体を兎・人魚・亀といった異種の生物に置き換えたり、アウトプットを漫画→オブジェ→映像など、異なる媒体へ何度も変換することで異化させる、語り直しによる作品制作を試みてきました。そして、その時々の心身の状況に合わせた制作を試行錯誤してきました。語り直しによる作品制作及び発表を継続することで、鑑賞者が自身の日常の行為の中にある創造性に気づくような機会と場を生み、心身がままならない状態でも創造行為をあきらめないあり方を提示していきたいと考えています。
【その他(応募動機、自己PRなど)】
私はこれまで、大学で現代美術を学びながら、日本が世界に誇るマンガ文化の文脈を汲み、平面作品やオブジェなどを制作してきました。マンガ文化の文脈とは、特定のマンガ作品に依拠したものではありません。
マンガのコマ割りや、登場人物の台詞や状況描写などの言語的・図像的な表現、つまりマンガの表現形式の方により注目しています。近年では、銅版画の制作に取り組んでいます。
銅版画とマンガは複製芸術という共通点も持っているほか、線画とスクリーントーンによって画面を作り上げていくプロセスとも重なります。銅版画の独自性として、気温や湿度によって銅版に図像を移す腐食液の具合が変化するなど、コントロールができない部分があります。また、銅版画にはさまざまな高度で複雑な表現技法があります。
図像に生じる偶然性や、豊かな技法による銅版画表現と、マンガ表現による相互照射によって新しい美術表現を探求しています。
新身訓練:I want to see my back.
20241銅版画・ミクストメディア(可変)
2022年秋に10年ほど患っていた背骨の手術をしました。本作は、術後の背後を気にしながらの療養をきっかけに生まれた、360度の視野を持つうさぎの知覚を想像するための作品群です。中心となる作品は、うさぎの見ているであろう世界を6枚の銅版で表現し、それらを立方体の展開図の構図で印刷した銅版画と、銅版をキューブ状に組み立てたオブジェです。提示されるうさぎを取り囲む世界自体は銅版のキューブの中にあるはずですが、鑑賞者はキューブを展開して印刷された銅版画からその中の世界を想像するしかありません。
個展会場では、うさぎが知覚する世界を想像するための導入として、奥行やスケールの認知に関する視差をモチーフとしたマンガのコマ割りの形式による6枚の図版<練習問題>などの作品を共に展示しました。
全ての作品は下記のPDFからご覧いただけます。