令和5(2023)年度助成金活動報告

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「生活態度としての詩」表現のためのzine/展示の実施

活動名称
「生活態度としての詩」表現のためのzine/展示の実施
氏名
今宿未悠
名称
--
実施年度
2024年

助成を受けた活動の成果

【企画内容】

本活動は、「詩とは生活態度である」という考えに基づきより多くの人が現代詩に興味を持つことを目的とし、①詩作の過程を言語化しまとめたzineの出版 ②物質的形式(映像、インスタレーションなど)による展示を企画実施することを目指し、助成をいただいた。

以下に、①、②それぞれの成果と、①②にとどまらない新たな表現の成果について記す。

①詩作の過程を言語化しまとめたzineの出版
2023年夏に、詩19篇から構成される詩集『還るためのプラクティス』を刊行した。 私にとって詩作とは、何か特別な啓示を受けて書き始める、といったような非日常の経験ではない。詩の基盤と なるような出来事は日常の中にこそある。つまり、日常と詩作とは緩やかに接続しているのだ。この、日常から詩 作への流れを示すために、私は自らの詩作のプロセスについて具に、かつ徹底的に言語化することを試みた。 言語化にあたっては、哲学、現象学、認知科学、脳科学などの知見を参照した。また、創造性認知の研究者であ る諏訪正樹氏、クリエイティブ・パターンの研究者である井庭崇氏、美学者である山内朋樹氏などの助言を受け 、論をブラッシュアップさせていった。結果として、2部、11万字からなる論考がまとめ上げられた。 本論考は、申請者が所属している慶應義塾大学政策・メディア研究科にて、修士論文としても提出した。そして、 その年度の最も優秀な修士論文に贈られる「加藤賞」を受賞するなど、一定の評価を受けた。さらに、本論考は、 書籍の形式で販売予定である。現時点では、2024年5月に開催される文学フリマにての販売が決定している。 今後もさまざまな販路を開拓することで、より多くの人に届けてまいりたい。

②物質的形式(映像、インスタレーションなど)による展示
『還るためのプラクティス』に収録されている、浴槽が子宮になる詩「毎晩うまれる」を、インスタレーションとして 展開し、展示を行った。展示においては、鑑賞者が実際にバスタブの中に入り、詩作品を鑑賞してもらった。「実 際に今日家に帰って風呂に入るときに、この体験を思い出すと思う」という声をもらうなど、詩の鑑賞体験と日 常との緩やかな接続に成功したと言える。

作品-01

また、この制作体験は、fabcafe kyotoのミートアップでプレゼンテーションを行い、ものづくりを行う人たちと共有した。

作品-02


①②にとどまらない新たな表現の成果
日常、詩、物質、について考え、言語化を試みたり作品を制作する中で、やはり「身体」というキーワードが私にと って重要であると再認識した。日常生活と詩作が緩やかに繋がり得るのは、それが紛れもない私の身体から始 まっているからである。また、詩作品を物質に置換するとは、空想上の身体経験を、現実の身体経験に翻訳する ことに他ならない。これをふまえて、より良い詩作を行う上では、その手前にある私自身の身体の経験をどれく らい研ぎ澄ませられるかを考えるようになった。身体を取り扱う表現領域に積極的に介入することによって、詩 と身体の関係の考察を行った。具体的には、以下のことを行なった。



ヌード表現を探求する
身体、裸体について考えを深めるべく、ヌード表現の探求をおこなった。写真家であるコムラマイさんに撮影を お願いし、撮影を行った。さらに、撮影した写真をもとにした詩を執筆し、詩画集の形にまとめた。

作品-03


atami art grantにてワークショップを行う
熱海にて毎年11月に開催される芸術祭・atami art grantに、アーティストランレジデンス「6okken」の企画 の一つとして招聘された。身体そのものについて考え、 他者とコミュニケーションをとるとは一体どのような営 みなのか、を、4名の芸術家たちと共に考え、ワークショ ップという形に昇華させた。言葉をかわすのみでは全 く辿り着けなかったような関係性や身体の動きが生み 出され、まざに身体の反応とは創造性の源泉であると 確認できた時間だった。

作品-04


atami art パフォーマンス作品 a garden of prothesisに参加し、詩を立ち上げる
トーキョーアーツアンドスペース本郷にて行われたパフォーマンス公演に、パフォーマーとして出演した。出演を 通じて、「イレギュラーな身体状況からこそ、先鋭的な詩は立ち上がってくるのだ」という直感を得た。現在、パフ ォーマンス出演の経験に基づく詩を執筆している。これはいわば、現代における舞踏譜(土方巽による)になりう るのではないかと考えている。

作品-05


総括
潤沢な助成をいただけたことにより、当初の計画を着実に実行できたのみならず、そこからさらに飛躍した思想に至り、実際にさまざまな行動を起こすことができた。本助成をしてくださった川嶋みらい財団の皆さまに深く感謝すると同時に、今後もますます活躍することで、恩を返して参りたい。心から、ありがとうございました。